2025年度JRA賞馬事文化賞を受賞した「相馬眼が見た夢 岡田繁幸がサンデーサイレンスに刃向かった日々」を読んだ。競馬ライターの河村清明さんの著書である。
競馬界の異端児ともいえる岡田繁幸の生涯を、長年にわたり取材してきた河村清明さんが描いた伝記である。
「総帥」と呼ばれた岡田繁幸は、社台グループやサンデーサイレンスの血が席巻する日本競馬にあって、自らの相馬眼と信念を武器に独自の道を歩み続けた。本書では、ラフィアンやビッグレッドファームの歩みだけでなく、家族との関係、馬主としての苦闘、ダービーへの執念など、知られざる素顔にも迫っている。
単純に「岡田繁幸の生涯」を人づてで聞いてまとめただけのものではなく、生前の本人や周囲の人をきちんと取材した上でまとめ上げられている。
著者の河村清明さんは以前私と同じ府中市に住んでいて身近に感じていたのだが、いつのまにか日高に引越していた(もちろん馬産地取材のために住居を移したのだろう)。この本によると岡田総帥とは馬主席で隣で観戦したりしていて、近しい関係にあったらしい。
長年、岡田繁幸を身近で取材してきた河村さんだからこそ描けた「総帥」の人間像。成功だけでなく、挫折や無念、そして最後まで消えることのなかった夢までを描いた、競馬ファン必読の一冊である。また、馬事文化賞の選考では、岡田繁幸という人物だけでなく、彼を通して「日本の戦後競馬史」を描いた点が高く評価された様に、戦後の競馬史をなぞるような内容で、非常に読み応えがあった。