毎日がエブリデイ!

日々の雑記帳

あれから10年

 1998年11月1日東京競馬場。私は指定席のスタンドで天皇賞を見ていた。1枠1番で1番人気の馬がハナを切った。そして大逃げを打った。他馬を大幅に引き離す痛快な逃げ。しかし、井田是政の墓のある通称大ケヤキと呼ばれる木の近くで、彼は急激に失速した。そして競走を中止した。彼は二度と我々の前に姿を現すことは無かった。

 その馬の名前はサイレンススズカ。希代の逃げ馬として評判の馬だ。競走中止は残念だが、自分で立って歩いていたので大丈夫だと思っていた。しかし、最終レース終了後のイベントで司会者の井崎脩五郎さんが「サイレンススズカ予後不良」ということを告げた。私の頭は真っ白になった・・・。

 当時私はWeb上で「スズカがゆく」という連載小説もどきを書いていた。あの当時は人気コーナーだった。それだけその馬に愛着があったからこそ書けたようなものだ。ふざけた内容だが、このような最期となった以上最終話はふざけた内容にするわけにはいかない。別に読者に媚びているわけでもなく、私自身の気持ちとしてふざけた内容では書けないのだ。最終話は当日家に帰ってからその日のうちに書き終えた。寺山修司の本を引っ張り出してきたりしながら。

 あれからもう10年も経つ。10年経った今でもあの日の悲しみは忘れられない。たぶん一生かかっても忘れないだろう。非常に愛着のある馬がレース中に私の目の前で予後不良となったのだから。


[PR]サイレンススズカ スピードの向こう側へ…