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日々の雑記帳

書を捨てて旅に出たくなってきた

 今日は有馬記念なのだが、それとは直接関係なく、最近読了した本の感想でも書いてみる。須田鷹雄氏の新著「いい日、旅打ち。 - 公営ギャンブル行脚の文化史 (中公新書ラクレ)」を昨日読了した。以下は書評というよりは私が個人的に感じたことを書き連ねた感想文である。


 著者は競馬のみならず3競+オートの公営競技の日本の全場を踏破したという経歴の持ち主である。この本は単なる旅行記ではなく、戦前からの「旅打ち」の歴史や各地の公営競技場の紹介、旅打ちに対する心構えや実践方法などが記されている。単なる体験記ではなく、旅打ち、つまり旅をしながら自分の本拠地以外の公営競技場で打つという行為そのものの指南書である。単なる旅行記・体験記なら(競馬に限られるが)昨年の馬事文化賞を受賞した亀和田武氏の「どうして僕はきょうも競馬場に」という面白い本があり私のおすすめ図書であるが、須田氏の「いい日、旅打ち。」はそれとは趣の異なる実用書に近い内容だ。旅打ちが好きな人、旅打ちを始めてみようと思う人にはぜひお勧めする。また、旅か公営ギャンブルのどちらか一方が好きな人も、趣味の幅を広げるという意味で読んでみるといいだろう。

 須田氏が各地の、特に地方の公営競技場に魅力を感じているところは「昭和」というところだ。公営競技の全盛期は(中央競馬を除くと)高度成長期という、ある意味日本が最も輝いていた時代である。オイルショック以降も昭和末期あたりまではその高度成長期に発生した文化が公営競技場の有無にかかわらず、全国各地にかなりの濃さで残っていたと思う。地方の公営競技場には、その高度成長期以降の昭和のテイストが残っているところがいいと、そこで語られている。昭和のノスタルジーを感じに旅に出るのだと。この辺が私の好みとも一致しているし、多くの旅打ちファンもおそらくそうだろう。ちなみに私は昭和のノスタルジーを感じに旅をするだけではなく、それ以前の時代の史跡とかを巡るのが好きだ。


 その本はかなり面白く、また読みやすかったのでぜひおすすめするが、載っていなかったものでぜひとりあげてもらいたかったテーマがある。昭和のノスタルジーを求めるのなら、東京競馬場西門前の飲み屋街もぜひ取り上げて欲しかった。公営競技場そのものではないけど、競馬場に付随している様なものなので、それはそれでありだろう。21世紀的な東京競馬場で打った後、昭和30年代的な西門前の飲み屋でオヤジたちの熱い競馬談義に耳を傾けるのも乙なものである。

 しかも西門前の飲み屋街って、競馬場西門からすでに廃線になった下河原線・東京競馬場前駅に向かって連なっているので、昭和テイスト以外にも鉄道マニアの須田氏の趣味には合致すると思う。鉄道ファンといえば単に現役の鉄道を追いかけるというだけではなく、廃線跡を歩く等のマニアックな趣味の人もそれなりにいるのだし。現に競馬場近くの廃線跡として下河原線跡地がその本の中で紹介されている。以前、「あの西門の飲み屋はなぜ府中本町駅の方向に向かってではなくちょっとずれた方向に連なっているのか」ということが気になって調べてみたことがあるのだが、昔は府中本町駅が無くて下河原線の東京競馬場駅というところが東京競馬場の西側の最寄り駅だったというのが理由らしいということが分かった。実際、私の家の近くからその駅の跡地まで緑道が走っており、時折レールがそのままになっている部分も見受けられる。そして、その鉄道が廃止された今でも、旧駅と競馬場西門の間の道には当時とほとんど変わらない飲み屋の風景が存在するのだ。


 ところで話題は変わるが、その本を読んでもう一度行ってみたいと思ったところが帯広競馬場だ。今の時代、地方競馬はネットでリアルタイム中継も行なわれているしネット投票もできるが(だから競馬場の客はネットをやらないような老人の比率が高いのだろう)、ばんえい競馬はぜひ生で観るべきものである。馬自体が大きくて力強く生で見る価値があるというのもあるが、普通の競馬は現地で見ていてもほとんどがモニター観戦で目の前を高速で一瞬通り過ぎる馬を見るだけだが、ばんえいの場合馬のスピードが人が早歩きで歩くスピードと変わらないので、観客が馬と一緒に走りながらレース中常に馬が走っているところを生で見ることができるのである。これはネットではわからない、実地で体験しなければわからないばんえいの魅力である。須田さんの本によると、帯広競馬場は真冬と夏のナイターの両方を経験してみるのがいいらしい。私は帯広単独開催になる直前のばんえい記念を観に行ったことはあるが、今度は真冬と夏に行ってみよう。夏は昼開催の岩見沢には2回ほど行ってるのだけどね。冬の帯広開催を調べたらちょうど私の誕生日の2月28日に重賞があるようだ。自分への誕生日プレゼントとして真冬の帯広にでも行ってみようかな。

 それ以外では荒尾競馬が魅力的だ。「海が見える競馬場」という景観的なものもあるが、やはりノスタルジーを感じるのはこういう炭鉱町の様な昔は栄えていたけど時代の流れと共に衰退していった町であり、それでも公営競技が維持されている様なところだろう。なんというかスタンド等の施設は石炭燃料全盛期そのままだけど、客の数自体はおそらくかなり少なくなっている。しかし、その数少ない客の勝負に賭ける情熱は熱く、衰退した街の中でも競馬開催を頑張って維持しているというところが、何とも言えない魅力を感じるところだよな。あくまで勝手に想像した情景だけど。

 競馬以外の競技についてはあまり経験がないので関東圏で経験を積んでからかな。競艇は2回だけ行ったことがある(なぜか地元の多摩川競艇には行ったことが無い)が、競輪、オートレースは全くの未経験だし。