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日々の雑記帳

独自のコンピュータ予想で競馬の配当160億円

 昨日の新聞にこんな記事が載っていた。

競馬の配当160億円隠す 英国人社長のデータ分析会社

 英国人が社長を務める東京都内のデータ分析会社が、競馬で得た配当金を申告せず、東京国税局から約160億円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。重加算税を含めた追徴税額は60億円超とされる。国税局が法人税法違反(脱税)容疑で同社を強制調査(査察)した後、社長が海外に出国したため、告発を見送り、任意調査による課税処分とした模様だ。

(中略)

 所得隠しを指摘されたのは、香港に親会社があるデータ分析会社「UPRO(ユープロ)」(渋谷区)。同社側は、「(ユープロ)社長とは別の、香港在住の英国人男性が実質的に経営していた。競馬の配当金はこの経営者のものだが、既に死亡している」などと主張しているという。同社は課税処分に異議を申し立てている模様だ。

 同社関係者らによると、同社は、株式市場の分析などを事業目的とするが、主な収入は競馬で得た配当金だった。独自のコンピュータープログラムで結果を予想し、億単位の資金で馬券を購入、巨額の利益をあげていたという。同社がこれを申告していなかったことを把握した国税局は08年、法人税法違反容疑で同社に査察を実施した。この際、英国人の社長のパスポートを押収したが、その後、社長は在日英大使館に「紛失した」としてパスポートを再発行してもらい、出国したという。

(中略)

 ユープロ社長が英国籍のため、日本と英国が結んだ租税条約に基づき、情報交換は可能だが、海外での身柄の拘束や資産の差し押さえはできない。国税局では、刑事告発するための証拠が十分に集まっていない段階だったため、やむを得ず任意調査に切り替え、同社に対し、07年までの3年間に約160億円の所得隠しを指摘したという。

http://www.asahi.com/national/update/1009/TKY200910080560.html

 コンピュータに予想させて配当160億円とは凄いよな。
 ぜひそのプログラムを使わせていただきたいものだ。儲かったらちゃんと税金払うからさ。


 そう思ったのだが、実はこれには落とし穴がありそうだ。

 その投資法というのはどうやら「投網馬券」らしい。要は思いっきり多点買いして当たりを引っ掛けるというもの。聞いたところによると、来そうにない馬1〜3頭ぐらいを除く全ての馬を3連単マルチで買っておくというものだそうだ。各買い目への投資額はオッズから逆算して儲かるように設定するという潤沢な資金があってこそ成せる買い方である。これを人間の手と頭でやると物凄い労力を労するしミスも多くなるだろうし(ある程度確定オッズに近いオッズが見えて来ないと作業開始できないので)締め切りも間に合わないだろうから、それこそコンピュータが必要となってくるだろう。

 それで、この「配当160億」というのが曲者。馬券で収入を得たときに認められる必要経費は「その買い目を買った金額分」だけなのである。具体的な例を出すと、あるレースで1点につき100円ずつ100点馬券を買って120倍の配当の馬券が的中した場合、投資金額10,000円で払戻し金額12,000円なので収支はプラス2,000円なのであるが、投資金額の10,000円は経費として認められず的中した目に賭けた100円だけが経費として認められるのである。この場合は得られた所得は11,900円としてこの所得に課税されるというわけである。納得がいかないが法律上はそういうことになっているらしい。しかも、ある程度の回数馬券を買っていると100%的中という人(or法人)はほぼ間違いなくいないだろうから、ほとんどの人は外れたレースがある筈である。この場合もハズレ馬券を買うのにかかったおカネは経費としては認められないのだ。

 ユープロという160億円の所得隠しが指摘された会社も、投網馬券で買っている以上大量の投資金額がある筈である。実はハズレ馬券(当たったレースの当たっていない目を含む)を159億円分買っていて実際は1億円程度しか粗利がないのかも知れないし、もしかしたら赤字なのかも知れない。

 上記の所得計算方法は数年前に聞いた話なのでもしかしたら法改正があったかもしれないし、個人と法人では税金の算出方法が違うかもしれないので、実際のところ160億円という数字がどうやって計算されたかということは正確ではないかもしれないが、もしその通りだとしたらこれは所得隠しだと言われた方は納得いかないだろうな。外国人だし日本の税法に詳しくない可能性だってあるわけで。

 ちなみに私自身も上で述べたような馬券収入の税金計算方法には納得していない。税金を取るのならハズレ馬券全部を経費として認めるべきだし、それが無理でもそのレースに賭けた金額は全て経費として認めるべきだ。もっというと、中央競馬の馬券の売り上げには国庫納付金というのがあり国に納められているので、その馬券に対して更に課税するのは二重課税だと思う。馬券は宝くじみたいに課税対象から除外するか国庫納付金を廃止する(その分控除率も低くする)かどちらかにして欲しいものである。

 もし本当に純利益160億円だったとしたら、それは凄いことだ。最後に巷の声が書いてある記事を紹介しておこう。

「予想プログラム」で160億円稼ぐ 競馬ファン驚愕!!「本当なのか」

 東京都内のデータ分析会社が、競馬の予想プログラムを使用して得た配当金を申告していなかったとして、国税局から約160億円の所得隠しを指摘されていた。1回のレースで数億円を稼いだこともあったという。競馬で儲けるのは至難の業だ。「いったいどんなプログラムなのか」「本当なのか」といった声がファンから上がっている。

(以下略)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091009-00000005-jct-ent

(10/14追記)

 この160億円稼いだユープロという会社について、この記事を書いた時点で巷で「来そうに無い目を外してそれ以外の目で投網馬券を購入していた」という噂になっていたのでそう書きましたが、実情はもうちょっと工夫された「オッズの揺らぎ」を利用していた買い方だったらしいです。
 須田鷹雄さんの日記の10/10付けの記事に書かれています。単勝・馬連・馬単から3連単の合成オッズのようなものを導き、それと実際のオッズが(有利に)乖離している買い目を抽出する「必勝法」だった可能性が高いです。
 ただし、須田さんが書いている内容も、あくまでそれらしき人たちを目撃したという人からの情報をまとめただけであり、プログラムの開発者に直接取材したわけではないので推論の域を出ていませんが、そちらの方がより真実に近いと思います。